格闘技にとって選手は財産

先日、三崎vs秋山戦がノーコンテンストになった際の会見で、FEG谷川貞治代表は試合とは直接関係のない契約がらみの話題で三崎選手の「モラル」を批判しました。
谷川代表は三崎選手が二試合契約の約束を反故にして“戦極”と契約したと批判し、それに対して菊田選手が事実と異なると反論、もう一方の当事者であるはずのやれんのか実行委員会からは公式見解が出ないという状態です。
事実関係はともかく、この件に関して長南亮選手が自身のブログでこんな発言をしています。

男の戦いにおもいっきり泥塗られてたね。
レフリーの采配があんな簡単に覆るのも驚きだし、日本最大級のイベントが口約束の伝言ゲームの契約方式だったのも驚き。

僕もこの発言には同感です。
谷川代表が「モラルを守らないとダメ」「筋を通してもらいたい」云々と抽象的な表現に終始しているのは、書面での正式な契約をしているわけではない=法的な処置をうてないからだと思います。
だとすればです、あたかも格闘技界の良心を代弁しているかのような谷川代表の発言は、たんなる「悪口」にすぎません
口約束で選手を飼い殺しにできるほど格闘技界は甘くはないし、選手だって食っていくためには試合をしてファイトマネーをもらわなきゃいけない。
そもそも、対UFCのために大同団結しようと言っている代表が、そういう密約のごとき二試合契約の話を持ち出して選手を批判するなんて、「ウチの契約は適当なのでバンバン引き抜いてくださいよUFCさん」と言っているようなものでしょう。


まあこの記者会見の話は不可解なことが多すぎるので、もっと平たい話をしましょう。
僕としては、格闘技団体のトップの人間が選手の悪口を言うことが自体が信じられません。
仮に大山倍達総裁が選手を個人攻撃するような人物だったら、極真はこれほど大きな空手組織になったでしょうか?
関根勤がモノマネでやっていましたが、シュートボクシングシーザー武志会長はただの練習生のことを思って涙を流しました。
そして、意外にも悪口を言わないのは、アントニオ猪木さんでしょう。
痴情のもつれで女に包丁で刺された棚橋選手も、借金に苦しんで自殺未遂を起こした安田選手も、猪木さんにプロレス流のフォローをしてもらったおかげでずいぶん助けられたと思います。
そこで猪木さんに罵倒されていたら選手生命を絶たれていたのではないでしょうか。
武藤選手が新日を離脱して全日に移籍した時でさえ、「新日の上層部にいた人間が企業秘密のノウハウを持っていったことが問題だ」と帯同したスタッフに矛先を向け、武藤選手への批判はしませんでした。


やはり自分の手で一国一城の主になった人は、下の人間の大切さを身にしみてわかっているということなのでしょう。
格闘技は選手がついてこなければ成り立ちません。
その点、谷川代表は自分が作ったわけではない城の主におさまった人物です。
それどころか、ターザン山本氏の弟子筋にあたる、プロレスマスコミ出身者。
ある意味、選手の悪口を商売にしてきた人なわけです
だから、ああやって公の席で選手の人格を平気で罵倒できるのでしょう。
格闘技を愛する者としては、こういう人物の率いるFEGの未来に、ついつい不安を感じてしまう今日この頃です。