PRIDE、K-1の大連立はFEGのWWE化

晦日のまさかの大連立から、DREAMの公式発表に至り、とうとうPRIDEとK-1&HERO'S側の長きにわたる確執に終止符が打たれました。
しかしそれは大同団結というよりも、PRIDEの破綻→FEGへの吸収合併というのが実質でしょう。
旧PRIDE勢の濃いエッセンスの部分は戦極のほうに流れましたが、ミルコやヒョードルといったスーパースターはDREAMに行きそうです。
PRIDEとHERO'Sの競争にはフジとTBSというテレビ局の争いという側面もあったわけですが、この合併によりFEGは会社内で「K-1MAX総合格闘技はTBS、K-1はフジ」という構造を抱えることになりました。


こまかい状況は異なりますが、今のFEGの姿はアメリカのWWEを彷彿とさせるものがあります。
WWEは経営不振に陥ったライバル団体、WCWとECWを買収し、事実上アメリカのプロレスを独占しました。
また、WCWやECWの名前を消滅させずに、WWEのリング内抗争のシナリオに利用しました(結果的に大コケしましたが)。


いまや、日本の格闘技界はFEGの独占状態にあります。
K-1およびDREAMのリングは日本格闘技界の“メジャーリーグ”であり、中小の格闘技団体は“マイナーリーグ”という構造もより強化されていくと思われます。
もうかなり以前からパンクラス修斗はPRIDEなどへの人材供給源となっていますし、キックボクシング諸団体もK-1へのトライアウトのごとき状況になりつつあります。
もちろんそれは「AのチャンピオンとBのチャンピオンが戦ったらどっちが強いんだろう?」というファンの欲望を実現させてくれるという点では良いことです。
いまや日本ほど格闘技が盛んな国はないわけで、いくつもの団体がタコ壷化して“お山の大将”的なチャンピオンを量産するよりは、ある種の非情なピラミッド構造の中で強さを競い合っていったほうが、よりレベルの高いものを見ることができるはずです。


一方で、それがひとつの団体によって取り仕切られるという部分には不安を感じます。
PRIDEとの緊張関係が消え、UFCとは暗黙の不可侵状態となると、FEGはよほどのことがない限り安泰です。
今年の大晦日でも、秋山vs三崎はノーコンテスト裁定に変更、山本KIDvsヤヒーラは変更なしという、いかにもFEGにとって都合の良いように見える勝敗の紆余曲折がありました。
やろうと思えばこういう“操作”がいくらでもできる状況になっているわけです。
本人たちが試合で結果を出してきたとはいえ、良くも悪くも山本KIDや秋山は“つくられたスター”です。
彼らがより一層の“操作”により“スーパースター”化していったとき、FEGWWEと何ら変わらない団体となるでしょう。


もちろん「それはそれで面白いじゃん」という意見もアリです。
しかし、それは“他の選択岐”があってこその話ではないでしょうか。
今現在、地上波で格闘技を見ようと思ったらFEGの興行を見るしかないのです*1
また、PPVの生放送でさえ、FEG以外となると限られた団体しか行っていないのが実状でしょう。


「夢のつづき」を謳うDREAMですが、それが悪夢でないことを祈るばかりであり、格闘技ファンが夢から覚めてしまわないように願ってやみません。

*1:いちおう地上波というくくりならCAGE FORCEなどもありますが、テレビ東京などあくまでローカル局での放送にとどまります。