文月晃『海の御先』3巻

先述の『ホーリーランド』最終巻と一緒に買ったのが『海の御先』の新刊。
沖縄地方と思われる島(宮古島がモデル?)の伝承と絡ませた恋愛ストーリーです。
もっと平たく言うと、主人公・ナギは島民から崇められる“龍神の生まれ変わり”で、彼から寵愛を賜るべく存在するという3人の巫女にあの手この手で迫られるという沖縄風ハーレムマンガです。


一応メインヒロインは雫ということになるのですが、2巻、3巻と進むに連れて火凛の比重が増しています。
この作者は『藍より青し』でもセカンド・ヒロインたるティナ・フォスターをかなり真剣にフューチャーし、物語を大いに盛り上げたことがあるので火凛の存在はこの先の展開を期待させます。
しかもこの巻で龍神、つまりナギは「3人のうち誰かひとりを選ばなくてはいけない」ことが明らかにされます。
これは、本作が“エンドレスぬるま湯ハーレムマンガ”に終わらないことを宣言したに等しいルールであり、3人の巫女たちとナギとの関係性が深まれば深まるほど決着が難しくなるというラブコメマンガの苦難の道を作者が選択したということになります。
例えどんなにサブヒロインたちにフォーカスしても、主人公にとって揺るぎないメインヒロイン桜庭葵が存在した『藍より青し』に比べると、『海の御先』は読む物をハラハラさせる展開になるかもしれません。
「果たしてナギは2人のヒロインを切り捨てることができるか」という抜き差しならないテーマがのしかかってくるからです。


その時ナギは土下座してあやまるかもしれないし(ex.『きまぐれオレンジ・ロード』)、ナギがヘタレな態度をとり続けると目の光を失ったヒロインたちが包丁で腹をえぐりあうことになるかもしれません(ex.『School Days』)。
それはジョークとしても、『海の御先』は想像以上に挑戦的なラブコメマンガではないかと私は思います。


ただ、ここまでのところ風の巫女そよぎのキャラ立ちがいまひとつです。
彼女にもグッとくる名シーンを演出して、ナギを巡る三巫女鼎立の緊張状態が確立することに期待したいです。


海の御先 3 (ジェッツコミックス)

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