森恒二「ホーリーランド」18巻(最終巻!)
「ホーリーランド」の最終巻が出ました。
まず特筆すべきは作者のあとがきがついているということ。
このマンガに対しては「作者視点のナレーションで説明すんなよ!」というのがよくあるツッコミだけれど、あとがきで作者自身が「自分にスキルがないから使った荒技だった」と認めつつ「結果的には良かったと思っている」と語っています。
以前から単行本のカバー見返しについている作者コメントからクソ真面目な人柄を感じていましたが、それはまちがいではなかったようです。
作者ナレーションについては、私もあれはひとつの“芸”になっていたんじゃないかと思います。
さて、以下はストーリーに関してのお話。
ネタバレですので要注意!
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まず、“キング”との対決はちょっとあっさりしすぎでした。
テーマ的にはヨシト戦の焼き直しに近いし……。
ただ、その一戦を踏み台にして、この物語の終局がユウとマサキの対決で締めくくられるというのは、前の巻でショウゴが退場した段階で確定していたと言ってよいでしょう。
ユウがマサキを乗り越えない限り、この話が終わるはずもないわけです。
そのあたりは王道の展開だからこそよかったと思います。
しかし、その後がどうもいけない。
ユウが刺されて、でもやっぱり生きている、と思わせるラストは完全に松田優作の「探偵物語」。
しかも「探偵物語」の場合はあの街に居続けてこその工藤ちゃんなわけだけど、ユウはあの街を卒業すべきであって、やっぱりまだ下北に生きている的な描写は予定調和だし不完全燃焼でしょう。
“聖地”というテーマにこだわりすぎていて、物語がずーっとその檻の中に囚われたままで終わってしまったのが残念です。
おなじようにユウとマイの関係も不完全燃焼。
この物語は肉体を削ることと精神を削ることが同義の格闘マンガなのですが、こと恋愛については終始プラトニック。
ここはもっと踏み込んでもよかったのではないでしょうか。
どうもこの作者はそのあたりのバランスが悪くて、格闘シーンには重い心情がこれでもかと覆い被さるのですが、恋愛シーンでは途端に重い場面を避けて軽い描写だけになってしまう。
例えば上條淳士の『赤×黒』のように、緊張感のある格闘シーンにも息抜きが挿入されたり、予定調和をおそれず脳天気なラストシーンを描くような柔法を、この作者は持ち合わせていないんだなあということをつくづく感じました。
さてさて、こう書いていると『ホーリーランド』の最終巻を批判しまくっているようですが、作者のその不器用さはまさに神代ユウという不器用な人間の物語を描くのには最適であって、最後まで『ホーリーランド』は『ホーリーランド』らしく終わったと思います。
実際のところ、大きな満足と好意的な気持ちを持って最終巻のページをとじた、というのが私の正直な気持ちです。
八年間の連載、おつかれさまでした。
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