K-1甲子園の希望と挫折は美しい

TBS「格闘王」でK-1甲子園の様子を放送していた。
はっきり言って全国から予選を勝ち抜いてきた高校生たちが全員強くて、レベルの高い攻防に驚いた。
しかしもっと印象的だったのは、負けて泣き崩れる選手たちの姿。
おそらくは地元や道場の同世代の中では負け知らずだった彼らが、全国区の舞台で味わう敗北。
高校生にとっては文字通り「人生で最大の挫折」に違いない。
でもこの敗北で、彼らは絶対にもっともっと強くなる、と確信する。
言ってみれば、“お山の大将”だった彼らがより高い領域へと踏み出す一歩になるからだ。


そもそもK-1というのは「空手とかキックとか打撃系格闘技が何百もあるけど、小さなところで“お山の大将”みたいなチャンピオンばかりでつまらない。みんな集まって本当に一番強いヤツを決めようぜ!」というとても単純な動機から生まれた大会だったと思う。
逆の言い方をすれば、どんなに偉大なチャンピオンもまず“お山の大将”になるところからキャリアをスタートさせる。
つまり大事なのは、その小さな器のチャンピオンはスタート地点にすぎなくて、そこからより険しい道を登っていくことができる者が一流選手になるということ。


もしかしたら、K-1甲子園がなければ、あの出場選手の何人かは“地方の高校生の中では一番強かったヤツ”の地位に満足したままで、世に出ることはなかったかもしれない。
でも彼らは今の自分が“お山の大将”だったことを知ってしまった。
まだまだ上には上がいたことを知ってしまった。
しかし、上へ登る道は開かれている。
その道を這い上がっていく選手が必ず何人もいるはずだ。
そう思うと、あの敗北した高校生たちの号泣にこそ、日本の格闘界の明るい未来を見た。
彼らの挫折は、希望の挫折だ。